不動産法律項目

更新料の支払い家賃の滞納と連帯保証人立退(たちのき)定期借家契約(2000年3月1日施行)敷金の返還

法律

法的な見解

借主

借主側の立場から

家主

貸主側の立場から

不動産屋

不動産業者の立場から

借りる方、貸す方、それぞれ言い分はありますが、法で定めていないことや、慣習によるものもあり、複雑です。
ここでは、法律論だけではなく、不動産業者サイドから見た、借主、貸主の賃貸借の問題を、法律と実務で紹介するものです

敷金の返還について

敷金については、実務上も問題の多いところです。

法律

敷金というのは、賃借人が家賃の支払い、その他賃貸借契約上の損害賠償などの支払を担保する為に、賃貸人にあらかじめ預けておく金銭です。何年入居していようと、賃貸借契約が終了したら、家主は家賃の滞納や建物等に損害がなければ、全額を返還しなければなりません。建物等の損害とは、借主の故意、又は過失によるもので、例えば、畳のこげ跡、クロスの破れなどは、借主の責任ですが、通常の使用による畳の色あせや、クロスのくすみ、フローリングの細かい傷などは、貸主の負担となります。しかし実際は、室内清掃代を含め、借主に請求しているのが現実です。貸主、借主共に、当然のことと思っている方がほとんどです。日本人、古来の良識として、退去の際には畳を替えるということが、根付いているからかもしれません。「立つ鳥跡を濁さず」というところでしょうか。

借主

預けてある敷金は、少しでも多く返還してもらいたいと、誰でも思うでしょう。契約終了時、現状回復の義務があるといっても、通常の使用による建物や、造作の劣化などまで、回復する必要が無いことは、あまり知られていません。特に建物等に損害がないにもかかわらず、賃料の二ヶ月分以上の請求をされたら、誰かに相談してみたほうがよいでしょう。その金額の明細を求めるのも効果的です。明らかに高額な部分があれば、不動産業者の収入としている場合もあります。契約時に、その内容に無関心な人がとても多いです。中には、「退室時、敷金の二割を償却する」 とか、 「2年以内の退室は、敷金を返還しない。」 等の特約をしてあることもあります。法的にも認められる場合があるので 注意したほうがよいでしょう。

家主

たとえ一年しか入居していなかったとしても、畳は家具などにより、色の違いができてしまい、そのままでは次の入居者が嫌がって決まらない。退室の度に、畳やクロスを、貸主が負担していたのでは割に合わない。貸主としては、長く入居していてもらいたいのだから、短期で退室したとしても、部屋のクリーニング代と、畳、クロスの交換代は、借主に負担して欲しいところです。

不動産屋

入居者が退室するとき、一番悩まされるのがこれです。どんなに注意して居住していても、冷蔵庫の裏のクロスの変色、畳の色あせ等は、防げません。クロスは全体的に色が変わっている場合、部分的な交換は出来ませんので、一部屋全面交換になってしまいます。 費用が、十万円を超えることも珍しくありません。長く住んでいた場合はまだよいのですが、二年程で退室した場合、当社としては、この金額を請求するのが、心苦しいのです。かといって、貸主の大家さんのほとんどは、上記の様な考えですので、管理を任されている業者としては、貸主に請求することは出来ません。「法的にもこれは、貸主の負担です。」 等と言えば、たちまち管理会社を変えられてしまうでしょう。借主との関係は、退室してしまえばそれまでということが殆どですが、貸主とは長い付き合いをしなければなりません。不動産業者として、どちらを大切にするかは、おのずと解っていただけると思います。しかし、上記の様な場合、弊社ではなるべく借主の負担を減らす為、清掃はアルバイトを管理して雇い、クロスは専用のペンキがありますので、それで塗り替え、畳は裏返し又は表替えで、一畳あたり\5,000 以下に抑えて、全て明細を発行しています。この為、以上の様に法律で定められていても、全ての借主様に理解して頂き、トラブルはありません。

更新料の支払いについて

更新料は慣習により認められているもので、法律では定められていません。

法律

 法律には定められていない、この更新料というのは、長い間慣習として行われています。民間の居住用賃貸住宅では、更新時に1ヶ月ないし2ヶ月分の更新料を支払うのは、当然となっていますが、公営の賃貸住宅では、更新料は取りません。契約内容を自由に定められる日本では、賃貸借契約の時に、更新時には更新料を支払う旨を定めれば、それは有効に成立し、判例によっても、借主には更新時に法外な金額でなければ、更新料を支払う義務が生じます

借主

2年に一度とはいえ、賃料の1~2ヶ月分を余分に支払うのは、つらいものです。しかし、契約書に定めてあれば、更新料は支払わなければなりません。逆に言えば、契約書等に書いて定めていなければ、支払う必要はないのです。更新料など支払わず、堂々と更新契約を請求できます。しかし、実際には不動産業者の作成した契約書に書いていないことなど、よほど とぼけた業者でない限りありえません。せめて契約前に更新料の額を確認するようにしたほうがよいでしょう。私個人の考えでは、居住用の賃貸住宅で2年契約の更新であれば、1ヶ月分以上の更新料は取りすぎだと思います。(関西方面などでは、賃料は安めでも、1年契約で、更新料2ヶ月などというのが、当然の地域もありますが・・)

家主

貸主としては、慈善事業ではないので、収入は多いほうが良いに決まってます。不動産業者を介さずに賃貸している場合は、更新料を取らない方もいらっしゃいますが、ほとんどの場合、入居時にたずさわった業者に更新事務を依頼して、更新料を折半しています。貸主自ら契約書を作り管理するのは、面倒であるし、賃料の不払いなど、何かあったときに直接借主に接しないのは、都合がよいことと、契約書をつくり、入居者の都合を聞いて契約日を定め、更新料の支払いを請求するよりも、業者に一任してしまったほうが、よほど楽だからです。こういった事情から民間の賃貸住宅の貸主は、ほとんど不動産業者に更新事務をまかせ、業者としては無料ではできないので、更新事務手数料として受け取り、貸主の取り分も渡さないと、以後依頼されなくなるので、半月~1月分を渡す。こうした繰り返しから、更新時にだまって更新料を受け取れる不動産業者への依頼が一般化し、更新料を支払うことは、契約条項に必ず書かれることとなったのでしょう。

不動産屋

賃貸不動産業者の収入のうち、更新料からの更新事務手数料は侮れません。なぜかというと、安定した収入源は、貸主に依頼された場合の管理費以外には、この更新事務手数料しかないからです。仲介手数料は臨時収入のようなもので、契約にならなければ一銭にもなりません。ですから、なるべく沢山の貸主と関係を保ちます。しかし、貸主にも色々な人がいます。更新時に更新料を1ヶ月分要求する貸主の場合、借主に最低1.5ヶ月分を請求しなければならないのです。これでは借主がかわいそうだと思っても、貸主にたてつけばそれで終わりです。当社では、更新料を1ヶ月分以上請求することはありませんが、更新料が高いからといって一概に不動産業者が儲けているというわけではないのです。どうせなら法律で、更新料の上限を定めてしまえばよいと思うのですが・・・

家賃の滞納と連帯保証人

貸主の最後の砦は連帯保証人です

法律

契約書に1~2ヶ月の賃料の滞納で無条件解約すると定めても、賃料の滞納が1~2ヶ月では、貸主からの無条件解約は出来ません。最低3ヶ月は滞納していないと、裁判所も強制執行等は認めてくれないのです。法律は、借主に急な出費などがあり、どうしようもない時に、住居まで失うのを防ぐ等の理由で、判例でそのようにしていますが、家賃を滞納する借主は度々であり、滞納しない借主は絶対しません。急な出費があっても対応できるのです。ですから上記の法律は、ごく一部の借主の為のものであり、不当に賃料を滞納する借主を保護していることになって、貸主が損失を招く可能性が高くなります。そこで、保証人が必要になるのです。連帯保証人は、ただの保証人と異なり、債務に関して借主と同等の立場になります。大抵の連帯保証承諾書には、契約を更新した際も保証義務があると記載されていますが、判例では記載なくとも一度連帯保証をすれば借主が退室するまで保証義務が生じます。借主との賃貸借契約に際し、貸主と連帯保証契約をした連帯保証人は、借主が賃料を滞納したときに、借主よりも先に賃料の督促等を受けても文句は言えません。たとえ借主に支払い能力があったとしても、先に借主から賃料をとれ、とは言えないのです。この様に借主の債務を保証してもらえるので、現在の賃貸借契約には必ず連帯保証人が必要になっています。

但し、定期借家契約の場合は契約期間が限定されているので、貸主と借主が合意によって再契約をしても、連帯保証の継承はありませんので保証義務はありません。

借主

今時、簡単に保証人になってくれる人は、なかなかいません。親族がまだ働いていて、収入があれば保証人要件にも合致し、頼めば保証人になって貰える可能性も高いでしょうけれども、そうでなければ誰か他人や、遠い親族などに頼むことになります。最近、保証人の代わりになってくれる組織がありますが、けっこう費用がかかり、こんな煩わしい保証人制度など無ければいいと、誰でも思っています。しかし、この制度だけは今後も変わりなく続くことになるでしょう。

家主

借主が家賃を毎月きちんと支払う人ばかりなら、連帯保証人など必要ないのですが、数十戸を賃貸していれば必ず滞納する借主が現れます。滞納した場合、借主に請求しますが、生活の基本である住まいの家賃を支払えないという事は、収入に見合った家賃でないか、借主本人に問題があるのですから、改善されません。法的には3ヶ月以上賃料の滞納がないと、なかなか解約できないので、借主が行方不明になったりすると、敷金などではとても追いつかないのです。こういった時に貸主としては、借主から賃料を回収出来なければ、他に請求できるのは連帯保証人だけです。借主の親であれば、かわって支払ってくれることもありますが、そうでなければなかなか他人の債務を支払う人はいません。ですから連帯保証人は賃貸借契約に無くてはならないものとなり、全ての貸主が保証人を必要とするようになったのでしょう。現在はかなり緩和されましたが、バブル時の貸し手市場では、保証人は不動産をもっている人に限る等、厳しかったものでした。

不動産屋

賃料管理をしている業者であれば周知のことですが、家賃を滞納する借主は特定されています。家賃を期日までに支払わなければならない、という認識がありません。業者が賃料管理している物件に不払いがあると、貸主に対して立て替えなければならず、踏み倒されでもしたら大変ですし、賃料管理をしていなくても、入居者を紹介した業者は、貸主の信用を削られる事になってしまいます。ですから不動産業者としては、資力のある確実な保証人を付けてもらいたいものなのです。知人や会社の上司等、保証人は誰でも良いのですが、いざ弁済を求めると、他人ではなかなか簡単に支払っては貰えません。もし、知人と喧嘩していたり、会社を辞めていれば、赤の他人になっていることもあります。保証承諾書と印鑑証明を取ってあれば、簡易裁判所へ 支払い命令の申立て をして回収する事は出来ますが、その前に保証人と話し合うとき、もめる原因になります。保証人に、親、兄弟などの親類を求めるのはこの為で、賃貸借契約の保証人といっても、中には100万を越える債務になることもあるのです。不動産業者の賃料管理は、結構たいへんなものです。

立退(たちのき)について

借地借家法改正、それでも借主優位は変わらない通常の賃貸借契約では、貸主からの立退要求は難しい

法律

平成4年、現状にそぐわない大正時代に作られた、借地・借家法が改正されました。しかし、これにより貸主の立場が、優位になった訳ではありません。貸主側の事情を考慮してもらえただけです。 具体的には、転勤、療養など、やむを得ない事情の間だけとか、理由が明確な取壊し予定のある建物を、それまでの間だけ、安全に貸すことが出来るようになったのです。但し、契約書に上記理由を明記してある事はもちろん、理由が真実でなければなりません。通常の賃貸借契約では、従来通り、貸主からの立退請求には、正当事由が必要です。正当事由とは、多様な事情などにより、貸主が借主を追い出さねばならぬ理由です。賃料が滞っている等、借主側に問題があれば別ですが、そうでなければ、まず認められないと思ってよいでしょう。自分が使う、子供が使う、親の介護のために使う、老朽化のため建替えたい、売却したい・・ 全て完全な正当事由には、あたりません。貸主、借主、それぞれの立場を考慮するので、立退料として数百万を付加しても、借主の事情によっては、認められない事もありますし、事業者を立退かせる場合など、億単位の立退料支払いが必要になった判例は、多々あります。契約書に、「貸主からの契約解除は、6ヶ月前までに申し出る事により、出来る」と記載しても、これは無効です。
借地借家法の強行規定で、貸主に有利な特約は、認められません

借主

物件探しに労力を使い、多額のお金を用意して、やっと借りた部屋。何年も住むつもりだったのに、立退請求。これではたまったものではありません。少なくとも入居にかかった費用は、全額返還して欲しいし、もちろん引越代も。貸主の都合で追い出されるのですから、遠慮はいりません。思った金額で交渉してもいいのです。裁判になれば、面倒なのは相手も同じ。なんの過失もなく、損する必要はありません。しかし、契約時に合意した事であれば、例え、法的に無効であっても、約束を尊守した方が、よいと思います。明らかに自分が不利なことを押しつけられたのなら別ですが、貸主と険悪な仲では、落ち着いて生活出来なくなるからです。

家主

様々な事情により、立退を請求しなければならない事も有るでしょう。しかし、現実は甘くありません。借主ともめれば、貸主は絶対的に不利です。もめないで立退をするには、唯一、借主との合意解約にもちこむしかないでしょう。時間があれば、更新時に「事情があって、これが最後の更新です」と言ったり、今後1年間賃料を安くするかわり、その間に退出してもらう、等です。しかしこれは、借主の良心にかかってしまい、確実ではありません。立退料を提示して、数ヶ月以内に退出してもらう、というのが、やはり一番手っ取り早い方法です。そこまでしたくない、と言うので有れば、立退の必要性がその程度のものなのですから、立退以外の他の方法を考えるべきではないでしょうか。貸主には、最低限、資産と賃料収入があり、借主よりも有利な立場にあることが多いのですから・・。ここに法の考え方があると思って下さい。貸主としては、賃貸経営の将来を計画し、立退を請求する事などにならないよう、見極めが大切です。もし、自分で利用する事になる可能性が高い場合などは、常に入退去がある為に収益は安定しませんが、借地借家法の適用がない建替の為の一時貸し契約にするか、現在は定期借家契約という方法がありますので、新規契約をする場合にはこの契約方法を使えば立退きの問題は起こりません。既に従来型の賃貸借契約を締結している場合は、法改正がない限り何年経っても定期借家契約への切替えは出来ないので、やはりこの問題はつきまとうのです。当社では、特に土地や一戸建住宅を貸そうとする場合には、後に問題とならぬよう貸主様に確認し回避していますが、結構この辺の法律知識が甘い業者も存在し、契約に際し特約しておけば大丈夫、と思っていることもあるので要注意。契約書に記載されていることは、必ずしも有効ではないとの、知識が必要です。

不動産屋

土地・建物は、人に貸したら戻らないと思え。と、よくいわれています。借地・借家法改正前は、確かに土地を貸すということは、手放す事と同じ様なものでした。そこで土地有効利用のため、定期借地権なるものが新設され、自分が生きていないであろう、遙か先に、必ず戻ってくる契約が出来るようになりました。建物に関しても、正当な理由が明確で有れば、必ず明け渡してもらえる契約もでき、幾分貸主の事情を考慮してもらえる様になりましたが、改正前からの契約には、当然適用されないので、いまだ争いは多々あります。業者としては、トラブルには関わりたくないものなので敬遠しがちですが、仲介にあたった業者で有れば当然相談にのるべきものです。

定期借家契約

期間限定の賃貸借契約賃料 大幅 DOWN か?

法律

正確には「定期建物賃貸借契約」という、欧米ではあたりまえの契約方式。従来のように契約の更新という概念がなく、一定の条件を満たせば、期間満了と同時に借家契約関係は終了する。双方合意の上なら再契約という方法で賃貸を継続することは可能です。契約は公正証書による必要はありませんが、契約書と定期借家である旨の説明を借主に対し書面によって行わなくてはなりません。これを怠ると通常の賃貸借契約の扱いになります。現在の賃貸借契約を定期借家契約に切り替えることは、当分の間は認められません。当事者が合意の上でもダメです。(事業用物件を除く)現在の借主を追い出すことに利用されることを避ける為で、3月1日以降の新規賃貸借契約にしか適用されません。

借主

大学生なら4年、新婚なら子供が生まれるまでの2・3年と、自分の都合に合った物件が安く借りれれば好都合です。長く住み続けることが前提でなければ、期間内に更新料もかからないし、貸主も合意すれば再契約することもできる。ライフスタイルに合わせて住み替えが自由にできる、そんな時代もすぐそこかもしれません。

家主

建物老朽化、いつか子供の為、相続のとき売却、等など、今まで賃貸するのをためらっていた貸主には大変な朗報です。1年でも5年でも10年でも、好きな期間を決めて賃貸することができ、期間満了の1年から6ヶ月前までに借主に通知するのを忘れなければ、自分で利用するも売却するも、再度賃貸するのも自由なのですから。但し、希望を満たそうとすれば当然借主には不利になることもあるので、賃料は下げざるを得ず、条件により通常賃貸相場より3~5割は安くしないと借り手が現れないかもしれない。通常の賃貸借契約では無理に借主を退去させようとすれば、それまでの賃料収入全額以上の拠出が必要になることもあったのだから、放っておくよりはまし、と割切って賃貸に出す方も多いと思います。賃貸相場全体が低下する懸念もありますが、賃貸物件が世帯数以上ある現在、ある程度いたしかたありません。有効に活用したいものです。

不動産屋

今までの賃貸借契約は既製品の契約書を使用し、殆どが2年契約であり、貸主の事情を考慮したり賃貸期間を決める事などありませんでした。しかし定期借家となるとそうはいきません。いつ明渡して欲しいのか、どのような事情で賃貸するのかなど、内容によっては税金や相続、権利関係の法的知識が豊富でないと、貸主に思わぬ損害を与えかねません。今まで賃貸することをためらっていた物件所有者と打合わせの上、安い賃料で物件を供給できるのは良いことと思いますが、特に1年以上の契約期間を定めた場合、借主に対し期間満了の1年から6ヶ月前までに通知するのを怠ると、例え契約満了期日がきても退室を強制出来なくなってしまいますので、通常の賃貸借契約よりも慎重にならざるを得ません。